「葛」の字の不思議

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ページ番号1005533  更新日 令和5年2月14日

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 このページ上では「かつ」と「かつ」の字も表示するために、ふたつの文字を画像処理しております。文字を拡大してご覧になりたい方は、PDFをご利用ください。

「かつしか」という地名

 かつしかくは古代のかつしかと呼ばれた地域のごく一部にしか過ぎません。古代の「かつしか」という領域は広大なものでした。古代の「かつしか」は、旧南葛飾郡かつしか・江戸川・墨田・江東区)と、千葉県市川・柏・流山・松戸・船橋市や埼玉県栗橋および茨城県古河・総和市までおよぶ広い地域がその範囲でした。
「かつしか」の地名は、当時のかつしかぐん全体の地形的特徴を捉えることで説明ができます。つまり、「かつしか」の「かつ」は丘陵や崖などを指し、「しか」は砂州などの低地の意味をもっています。「かつしか」とは、利根川流域の右岸に低地、左岸に下総台地が広がる旧かつしかぐんの地理的な景観から名付けられたと考えられます。

「かつしかの地名と歴史」(平成15、葛飾区郷土と天文の博物館)19頁による

 「かつ」と「かつ

 ところで、「かつしか」という漢字を書くときに困ったことはありませんか。「かつ」の字が、「かつ」や「かつ」などまちまちだからです。
かつしかくでは「かつ」と書くのが正しいと説明していますが、「かつ」と書く人もたくさんいます。

歴史的にみた「かつしか」の表記

「葛飾」721年 下総国葛飾郡大嶋郷戸籍(正倉院文書 宮内庁正倉院事務所所蔵)

「かつしか」が文字として表記されている最も古い史料は現在のところ、下総国府が都に提出した「養老五年下総国かつ飾郡大嶋郷戸籍」にみえる「かつ飾」です。大嶋郷戸籍と同じ8世紀に編纂された万葉集の中にも「かつしか」が表記されていますが、基本的に音に漢字をあてているだけです。また、下総国府付近から出土した奈良時代の土器には、「かつ」の字が墨書されていました。
中世になると、千葉県の香取神宮に所蔵されている寛元元年(1243)の古文書には「下かつ西」とあり、応永33年(1426)の奥津家定寄進状に「かつ西庄」、永禄5年(1562)に小田原の北条氏が本田氏に宛てた書状には「かつ西」と記されています。このほかにも、「かつ西」と記した史料が多くあり、中世においては圧倒的に「かつ」の字が用いられています。
こうしてみると、古代から中世にかけて「かつしか」の「かつ」あるいは「かさい」の「か」という漢字の表記は「かつ」とする事例が多いように思えます。
江戸時代になると、「かさ井」「笠井」なども使われ、実に様々な表記がなされます。中世や近世においては、当て字なども頻繁に使われており、字よりも音のほうが重要だったようです。

「かつしかの地名と歴史」(平成15、葛飾区郷土と天文の博物館)45頁による

 「かつ」と「かつ」をめぐる混乱

 その後も「かつしか」を表記するときの混乱は続き、現代まで尾を引くこととなります。「かつ」と「かつ」は、新聞の紙面や官公署関係の表示でも、人や機関によって異なった表記がなされていました。
このような混乱を避けるため、昭和61年、かつしか区ではCIサイン(区のマークやロゴ)を選定する際に、区の関連の表示については、略字ではない正字の「かつ」の字を使うことにしました。

国語的に見た「かつ」と「かつ」について

  「かつ」の異体字が「かつ」です。どちらも漢字として存在する正しい字です。異体字ですから、その差は字体のみであり、文字としては同一の意味をもっています。「かつ」の字が、誤字や俗字であるということではありません。なお、第21期国語審議会の「表外字印刷標準字体表試案」では、「かつ」は中国起源の正字「かつ」の略字として扱われています。

法的に見た「区名」の根拠

警視庁・東京府公報(昭和7年5月24日付)

 区名を法的な観点から見るとどうでしょうか。
かつしか区の区制施行を告示した、「警視庁・東京府公報」(昭和7年5月24日付)には、「かつ」と明記されています。また、戦後定められた地方自治法第3条第1項には、「地方公共団体の名称は、従来の名称による」と定められています。したがって、従来からの名称である告示時の名称「かつ」が正式な区名である、というのが本区の見解です。

コンピュ-タでは「かつ」が使われるのはなぜか?

 コンピュ-タでは、JIS情報交換用漢字符号系という規格が使われています。この規格には旧規格である「C6226-1978」以前のものと、新規格である「X0208-1983」以降のものがあります。旧規格(旧JISコ-ドと呼んでいます)では、「かつ」がコ-ド「1975」で指定されていました。ところが、新規格(新JISコ-ドと呼んでいます)では、同じコ-ド番号に「かつ」が指定されているのです。その上、「かつ」は指定からもれています。この時、字体が入れ替わった文字は「新旧JIS変更字形」などと言われ、ほかにもたくさんの文字の字体が入れ替わりました。
そこで、本区では、ワ-プロの各メ-カ-に「かつ」の字の搭載をお願いしたり、各新聞社に区名表記の適正化を呼びかけました。(現在、5大日刊紙では地名としての「かつしか」には、「かつ」の字を使用しています)
なお、平成16年2月20日の「JIS漢字コード表(JIS X0213)」改正によって、「かつ」とされていた字形の例示が「かつ」になったことで、今後パソコンなどに搭載される字形が「かつ」に移行していくことが期待され、改正された「JIS漢字コード表(JIS X0213)」に対応したOS(基本ソフトウェア)では、「かつ」の字が、表示できるようになっています。

ホームページと「かつ」の字

 ホームページ上でも、できれば「かつ」の字を表出できればいいのですが、先ほどご説明したとおり、字体の表示はユーザー側のマシンに依存するので、「かつ」と表出される場合もあります。
なお、この文章上で「かつ」と「かつ」が区別できているのは、ふたつの字体を画像処理しているためです。(この文章では、区別しないと話しができません)

官公署への「申請」・「届出」と区名の問題

 かつて、一部の官公署で「かつ」の字を用いた申請書類が受理されなかったという申し出に接したことがあります。しかしながら、現在、裁判所をはじめ、ほとんどの官公署では問題が生じておりません。本区窓口におきましても、「かつ」の字を理由に不受理とすることはありません。

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